僕は割と昔から、「大学ってこんなに要る?」「今あるFラン大学は無くてよくないか?」など思っていました。
この本を読むことで、実は大学は崩壊寸前である(既に崩壊している部分もある)ということ、そして日本の大学が抱えている問題について、理解が深まったと考えています。
本の基礎情報
- タイトル:大学大崩壊 リストラされる国立大、見捨てられる私立大
- 著者:木村 誠
- ジャンル:教育学一般関連書籍
- 発売日:2018/11/13
著者の経歴について
1944年、神奈川県生まれ。教育ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部新聞学科卒業後、学習研究社に入社。『高校コース』編集部などを経て『大学進学ジャーナル』編集長を務めた。現在も『学研進学情報』などで活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
この本はどういう本?
現在(コロナが流行する以前の話ですが)、大学がどのような問題を抱えているのか、ある程度データに基づいて解説しています。
本の構成
目次
- はじめに 大学の崩壊が始まる
- 第1章 「質か量か?」を迫られる有名私大、あがく地方私大
- 第2章 研究費確保に疲弊する国立大学
- 第3章 使い捨てのポスドク、非常勤講師
- 第4章 奨学金返済問題という時限爆弾
- 第5章 「グローバル化」の実態は留学生頼み
- 第6章 1校しか認可されなかった専門職大学
- 第7章 情報公開で明らかになる不都合な真実
レビュー(感想)
日本の大学の研究力について
僕はよく、「日本人は日本語バリアに守られている」という話を耳にします。
そして、日本は、日本語や特殊な文化による非関税障壁で、人材市場が国境を超えてグローバル化することを防ぎ、この障壁の内側で日本の本流エリートたち(科挙的受験勉強に励み日本の有名大学を卒業して終身雇用が前提の伝統的な大企業や官庁で働く総合職)はあまり国際競争に晒されてこなかったことを指摘した。こうした本流エリートは英語が共通語の海外の企業で働くことは難しく、また外国人が日本語を習得して日本企業でマネジメント職に就くことも困難で、国境を超える人材の流出・流入の両方向で日本市場への参入障壁になっている。いまだ世界第三位の巨大な日本経済のパイは、このような堅牢な日本語バリアにより守られているのだ。
日本は日本語で研究発表する場所があります。
自国語で学び、研究することができる環境は一見良いとされるかもしれませんが、グローバル化によって英語が主流となった今、良くない環境であるということです。
海外の研究者からしてみれば、わざわざ日本語で書かれている論文を読もうとは思わないといったところでしょうか…。
ポスドク問題について
ポスドク(Postdoctoral ResearcherあるいはPostdoc)とは、大学院博士後期課程(ドクターコース)の修了後に就く、任期付きの研究職ポジションのことをさします。 ポスドク研究員、博士研究員とも呼ばれます。
なぜポスドクは生まれたのか?というのが本書では書かれています。
国が博士号取得者を増やそうとする→博士号取得者が増える→でも進路については国も考えていない→教授等のポジションがない→彷徨うポスドク誕生…
みたいな感じのようです。
奨学金について
僕自身、奨学金を借りて大学へ通ったので、ここは特に興味深い話でした。
奨学金を借りて大学へ通う人は昔に比べて増えたそうです。
大学が授業料を大幅に値上げしたことが原因(の一つ)と書かれています。
にも関わらず、初任給は全然上がらないので、奨学金返済総額と給料の溝は深まるばかりと言えるでしょう。
将来のことを考えると、果たしてそれで良いのかと思ってしまいますね。
グローバル化と留学生について
先日、物議を醸したニュースがあります。
首相は、留学生は「我が国の宝」と指摘し、ビジネス客が少ない平日を利用して優先的に受け入れると説明した。
留学生は「我が国の宝」と言って優遇し、日本人の学費は値上げされる一方というのが、多くの人から反感を買ったようです。
僕も「何でこんなことを言ったんだ?」と思っていましたが、その答えに近いものが本書に示されていました。
全国の大学はグローバル人材の育成に躍起になっているわけですが、時間もお金もない。そこで手っ取り早く、外国人留学生に来てもらうことで、グローバル化しちゃおうというのが、裏事情のようです。
しょーもないなと思ってしまいますね。
グローバル人材という言葉は、非常に曖昧な言葉だと思いますし、目先のことしか考えない人間ばかりになってしまっては日本は衰退していく一方なのではないでしょうか。